【八事山興正寺】八事の森に佇む、祈りと癒しの寺
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1688年、弘法大師の五鈷杵を授かった天瑞圓照和尚により開山され、尾張徳川家の祈願所として深い信仰を集めてきました。
境内には、国の重要文化財に指定された東海三県唯一の木造五重塔(1808年建立)や、長寿・安産のご利益で親しまれる「ぽっくりさん」こと大隨求明王を祀る西山本堂など、歴史的建造物が点在。また、普門園では四季折々の自然を楽しむことができます。
毎月21日の「興正寺マルシェ」では、地元の農産物や工芸品が並び、多くの人で賑わいます。都会の喧騒を離れ、歴史と自然、文化が調和するこの寺院で、心安らぐひとときをお過ごしください。
愛知県名古屋市昭和区八事本町78
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五重塔が語る、尾張の祈りと美の系譜
八事山興正寺は、300年以上の歴史を誇る真言宗の名刹。開山は1688年、弘法大師の五鈷杵を授かった天瑞圓照和尚によるもので、以来、尾張徳川家の祈願所として篤く信仰を集めてきました。その歴史とともに受け継がれてきた文化財の数々は、今も境内に息づいています。

なかでもひときわ目を引くのが、国の重要文化財に指定されている木造五重塔。高さ約30メートルを誇り、東海三県で唯一現存する江戸時代の木造塔として知られ、訪れる人々を魅了しています。


また、西山本堂や観音堂など、歴史的建築群も見どころのひとつ。いずれも江戸の面影を残す風格を備え、寺の格式を今に伝えています。


寺宝としては、仏像や曼荼羅、書画をはじめとした貴重な仏教美術品が所蔵され、時折展示も行われています。こうした文化財の背景には、歴代の住職たちによる護持と信仰の営みがあり、八事山興正寺の精神性と美意識が随所に表れています。
この地を訪れれば、ただ祈るだけでなく、歴史と文化に触れ、心静かに時を重ねる体験ができるはず。
祈りと季節がめぐる、八事の年中絵巻

八事山興正寺では、一年を通じて多彩な行事が執り行われ、参拝者はそのたびに心を整えるひとときを過ごすことができます。
正月の初詣には多くの人々が訪れ、新たな年の平安を願って五重塔を仰ぎ見ながら参道を歩きます。続く節分会では豆まきを通じて邪気を祓い、春の訪れを迎える準備が始まります。

4月には花まつりが開かれ、境内に咲き誇る桜とともに釈迦の誕生を祝います。夏には大施餓鬼法要が執り行われ、先祖への供養とともに、自らの命を見つめ直す時間が訪れます。

秋には「八事の火まつり」千燈供養会の大護摩で迫力ある法要が執り行われます。そして年の終わりには、除夜の鐘を一打ごとに煩悩を払うため多くの人々が列をなし、静かな感動に包まれながら新たな年を迎えます。

こうした法要や年中行事は、興正寺の精神を体現する重要な営みであり、訪れるたびに心を洗い、日常の慌ただしさから解放される感覚を与えてくれます。
四季折々の風景とともに、訪れる人の人生の節目に寄り添う祈りの空間です。
心を整え、日常を見つめなおす。八事で出会う“静かな学び”

八事山興正寺では、仏教の教えをより身近に感じられるさまざまな体験や講座が用意されています。写経や瞑想をはじめとした修行体験は、忙しい現代人にとって心の静けさと向き合う貴重な時間となり、多くの参加者から好評を得ています。

写経は、心を落ち着けて一文字ずつ丁寧に書き写すことで、自分自身と向き合う内省の機会になります。瞑想体験では、雑念を手放し、呼吸と意識を整える時間を過ごすことができます。


また、子どもたちが日本の文化、風習を体験する子ども寺子屋くらぶも開催されており、仏教の教えや礼儀作法、自然との関わりなどをテーマにした学びの場として親しまれています。日常生活に役立つ“気づき”や“学び”が得られる、心のリトリートのようなひとときです。
静かな環境の中で、五感をひらき、自分と向き合う八事山興正寺の体験プログラムは、ただの観光では得られない深い癒やしと充実を提供してくれます。
地域とつながる、寺の新しいカタチ

八事山興正寺は、祈りの場であると同時に、地域とつながる開かれた空間でもあります。


その象徴ともいえるのが、境内に広がる自然庭園「普門園」。春には桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は静寂な雪景色と、四季折々の表情を見せてくれるこの場所は、訪れる人々にやすらぎと癒やしを与えてくれます。
園内には茶室「竹翠亭」もあり、期間限定で季節の室礼をご覧いただけます。

また、毎月21日に開催される「興正寺マルシェ」は、地域との交流を育む場として定着。無農薬野菜やこだわりのフード、手仕事のクラフト雑貨など、個性あふれる出店が並び、子どもから大人まで多くの来場者でにぎわいます。単なる買い物の場ではなく、人と人とがつながり、心を通わせる“現代の縁日”とも言えるイベントです。
寺という伝統的な空間に、現代的な交流と賑わいが交差することで、八事山興正寺は今もなお新しい魅力を生み出し続けています。観光として訪れるだけでなく、日々の暮らしの延長線上でふと立ち寄れる場所として、多くの人に親しまれています。